ジリリリリ………...。

目覚まし時計の音が聞こえる…。いつもどおりの今日が始まった。と思っていた。

だが思っていなかった。これからある人と知り合う事で、こんな事になるとは…。











太陽









第一章









災難?










「…朝か……」

明るすぎるほどの朝日が射し込む。

「うぅ…。時間は…?」

俺は時計を覗き込む。…何だ、まだ7時じゃないか…。何でこんなに早くに設定したんだ?

少々間をおいて、考え込む。口からはいつもの様に独り言が出始める。

「今日は水曜日。そんなに早くに起きて、見たいテレビは無い。宿題は面倒だが昨日片付けた。…うーん」

考えているうちに、時計の針は15分を指していた。

「…まぁ、せっかく早起きしたんだ。たまには早めに学校に行ってみようかな」

その時、下の方から俺を呼ぶ声がした。

「おーい!たまには一緒に学校いこうよ!」

…学校?まだこんな時間なのに…。元気だなぁ。

「まさかまだ寝てるんじゃないでしょうね!?もう8時越えてるわよ!」

…8時?…!!

この瞬間思い出した。そう、時計は一時間遅らせていたのである!

「あ〜〜〜〜〜〜〜!!」

俺はベッドから飛び起き、着替え、カバンを持ち、物凄い勢いで階段を下りた。

俺の名前は神谷洸、高校二年生。洸で「こう」と読み、よく珍しいと言われる。確かにそんな気がしないでもない。

ちなみに、見た目は何処にでもいそうな普通の学生である。

…今、時計一時間遅れを忘れる何て、普通じゃない!とつっこまれた気が…。まぁそんな事はどうでもいい。

「飯を食っている時間は無い!となれば…!」

俺は食パンを一枚つかみ、頬張る。マンガ等では良く見る景色だが、まさか本当に起ころうとは…。

勢い良くドアを開けた前には一人の少女が立っていた。

彼女の名は前葉佳奈美で、俺の幼馴染。可愛らしい名前とは裏腹に、男勝りで、剣道が得意と言う何とも恐ろしい女である。

外見は、ショートヘアに、茶髪がかかった黒。目は丸い。まさに典型的な幼馴染タイプである。

「遅いよ!もう20分じゃない!」

「あー、分かった分かった。鍵かけるから待ってろ」

…と、まぁ日常的な会話を繰り広げた。これが習慣である。

もしかして、そろそろ時計の時間直した方が良いか?

鍵をかけ終わり、走り出す。嗚呼、自転車に乗りたい…。

走っていると、前に俺の高校の生徒がいた。奴も走っている。まだ仲間がいたのか、良かったー。

「良い訳無いでしょ!!」

…そう簡単に人の心を読むな。

俺らは走り続け、俺はその生徒を追い越す際に振り返った。

あまりに凄い形相なので、一瞬だれか分からなかったが、すぐ思い出した。

「よぉ、圭介。お前も遅刻か?はっはっは」

等とからかってみる。こいつは梅田圭介。簡単に言うと眼鏡である。

誰にでも敬語で礼儀正しく、頭も良く他人に優しい。両親が教師らしいからこうなるのも当然…か?

しかし、優柔不断で勇気が無いため、損な役回りが多い。

俺と佳奈美、圭介の三人は、幼馴染で幼稚園の時から一緒なため、三人一緒に呼ぶときは三兄弟と言われる事が多い。

「あっ、洸君!佳奈美さんも!まだ僕以外に遅い人居たんですね、良かったです!」

「「良い訳あるか!(無いでしょ!)」」

俺と佳奈美の声が揃う。圭介は、こう言う無意味な所だけは俺に似ている。

そうこうしている内に、校門が見えてきた。

「よし、何とかセーフだ!!」

俺はそう叫んだ。口には出さなかったが、恐らく二人も同じ事を思ったに違いない。

だが入ったか否か、その甘い妄想はいとも簡単に打ち砕かれた。

キーンコーンカーンコ−ン

「………」

俺らは、その場で顔を見合わせる。

「…まだだ!急げば間に合う!…ハズ」

俺の言葉が一瞬の沈黙を破る。

そして、俺達はまた走り出した。さっきから走ってばっかだな…。




俺らの通う高校は私立やまびこ学園。特に大きい訳でも小さい訳でもない。生徒も500人ぐらい。まぁ普通の学校だ。

俺らは教室についた。何故か三人とも同じクラスだ。

「おおう!遅かったな!!」

いつもどおり友人に、声をかけられる。

「遅いなんて…。いつもの事だろ?」

「いけませんよ!そんな事では!」

…また来た。奴は谷島 麻衣。学級委員で、正義感たっぷりな奴。外見はメガネ…だな。

妙に男子に人気なようだが、俺はあんまり好きじゃない。何故かと言うと…

「そうやって、いつもいつも!全く、あなたは時間の大切さが分からないんですか!?」

…このように、口うるさい。しかも何か俺には他人より強く当たるし。

面倒だし、無視してようか…。

その時、友人が横から割り込み、こんな事を言った。

「…なぁ。もしかしたら、麻衣って洸のこと好きなんじゃないのか?」

「えぇ――――――!?」

どうやら聞かれていたらしい。顔を赤くしながら、彼女は叫びだした。

「そっ…そんなわけ、無いでしょ!!」

………。辺りが静かになる。恐らく全員こう思ったのだろう。図星と。

当たり前だな。反応が分かり易すぎる。その内、一人が口を開いた。

「谷島さん…。まさか本当に……」

とその瞬間。

ガラッ…

担任の教師が来た。全員が、大急ぎで机に戻る。

「今日は皆に嬉しいお知らせがある!」

嬉しいお知らせ?休みが増えたのか?それとも勉強が減ったのか?…にしても、小学校みたいなノリだな、先生よ。

「今日から新しい仲間が増えた。では、入ってくれ」

…何だ。転校生か。男子か?女子か?…別にどっちでもいいけど。

適当に考えてるうちに、生徒が入ってきたようだ。…長髪で髪を後ろで纏めているようだ。しかし、男子の制服を着ている。何か珍しい奴が来たな。

「…草薙 速人。宜しく…」

無愛想だな、ヲイ。緊張しているだけか?

周りを見ると、早速クラス中でヒソヒソしているようだ。

「えーと席は…。神谷の隣が空いているな。そこに行きなさい」

へー神谷の隣……俺!?俺の隣か!?

「彼はここにきたばかりなので、分からない所等が有れば教えてあげてください。では、一時間目は、数学なので、準備をしておいてください」

教師がありがちな言葉で締める。さて、数学か。…ん?

クラスの奴らが有名人を見つけたかの如くやってくる。

そして、転校生名物「質問攻め」が始まった。…草薙君、合掌。

皆して、彼に何処から来たやら、何処に住んでいるやらの陳腐な質問を始めだした。

「何処に住んでいたかは…秘密だ。今は、高菜町の二丁目に住んでいる」

「高菜町二丁目だと?って事は近所だな」

つい口が滑ってしまった。このプチ戦場と化した教室で…。

「近所?神谷さんいいなー」

と、お約束のように一人の女子が喋った。いい物なのか?男の俺には良く分からんな。

「へぇ、そうなんだ。よろしく…えーと」

「神谷 洸だ。よろしくな」

俺らは握手を交わす。

大体の質問が終了した瞬間、数学教師が入ってきた。

「あー、諸君。席についてくれるかな?」

教師がチラリと俺らのほうを見る。散って行く生徒達。

「では、数学を始める。昨日の復習だが…」

いつもの授業が始まりだした。めんどくさいし、別のことを考えていようか…。

とりあえず、俺は謎の転校生、草薙君について考えることにした。

…しかし、彼は謎が多い。いや、多すぎる。全く分からん。

家の近くらしいが…。一体どこだ?最近引っ越してきた所なんて…もしや。

家の向かいの家は空家になっている。お化け屋敷と呼ばれ、近所の子供が探検しているのは有名な話だ。何でも、人魂を見たと言う人が後を絶たんらしい。

もしその原因が彼で、人魂と灯りを見間違えたとすると…。いや、そもそもそこにいなければ駄目な理由が謎だ。まるで誰かから身を隠すように…。

………ハハハ…。そんな面白い話なはず無いか。

その時、前から何かが飛んできた。

バシッ。

飛んできた何かは額に見事命中する。…チョークだ。

「おい、私の話をちゃんと聞いているか?後々後悔しても知らんぞ!」

「…ハイ、すいませんでした」

ぬぅ、ひとまず勉強に集中するか。…ふと見回すとあちこちでニヤニヤしている。ハァ…。




午前授業終了。つっこみは無しの方向で。

「ふ〜、かったるい授業は終わったなぁ〜」

俺は軽く溜め息をついた。

「洸ー。一緒に弁当食べない?あんたの分も作ってあるわよ」

「おぉ、助かる…」

「圭介、行くわよ」

「うん、分かった」

「あ、そうだ。草薙君一緒に来ないか?」

「え?どこに?」

お決まりの反応だな。

「屋上だよ。休み時間は屋上が開放されてるんだ」

「へぇ…。いいよ。一緒に行く。それと、速人でいい」

「OK、俺も洸でいいよ」

俺たちは屋上へと急いだ。そうでもしないといつも先客がいるからな。

ガチャ。

ドアを開けるどうやらまだ誰もいないようだ。

「やり!一番乗り!!」

柄にも無いことを叫んでみる。

「うるさいわね…」

佳奈美は呆れている。無視しよう。

「さっさと弁当食べましょうよ」

「そうするか」

俺たちは腰を下ろす。

「そういえば、速人さんは何故転校を?」

「まぁ親の事情で…」

圭介と佳奈美まで質問し始めた。面倒だし、さっさと食い終わるか。

俺はふと空を見上げた。鳥はいいな。自由な翼がある。俺も自由に飛び回りたい…。

その時、佳奈美が話しかけてきた。

「ねぇ、あんたは彼の事気にならないの?」

「ん〜別にどっちでもいい…」

「あっそう…。そういえば、速人君。こいつの近くらしいけど、具体的にはどこに?」

ぉ、実は俺も聞きたかった事だ。まぁ俺は弁当食うの優先して質問なんてどうでも良かったが。

「それは…。誰にも言わないなら言うよ」

…えらく意味ありげだなぁ。まぁいいか。

「俺は誰にも言わないぜ」

「私も秘密なら言わないけど」

「僕も言いません」

そして彼は頷き、話し始めた。

「分かった。俺が住んでるのは…」

キーンコーンカーンコーン

…お決まりのように沈黙が流れる。

「……さて、食い終わったから俺は行く」

「あ、待ちなさい!少しでも早く終わるためにあんたは皆の分食べなさい!」

な、何故俺がそんな事を!?すかさず反撃した。

や・だ・ね・!お前らが悪い!じゃあな!」

「あっ、待て!このぉぉ!!」

バキッ!

佳奈美の右ストレートが見事に炸裂した…。

「う…い、嫌だぁ!俺は遅れたくないぃぃぃ!!」

「駄目よ!こうなれば意地でもあんたも道連れにしてやる!」

横で傍観していた速人がついに口を開いた。

「…いつもこんなのなのかい?」

「えぇ、まぁ…」




何とか飯を食い終わり、俺たちは教室へと向かった。

そして下校時間。時の流れは速いものだ。

「おーい速人ぉー!」

俺は彼を呼んだ。もちろん目的は家を調べるためだ。

「ん?何?」

「一緒に帰らないか?どうせ一人なんだろ?」

「そうだね…。分かった。OKだ」

俺たちは校門を出た。

「ねぇ、洸。二人とは一緒に帰らないのかい?」

「あいつらは部活があるからな。俺は帰宅部だし。部活なんてかったるくてやってられないよ」

「へぇ…。でも、部活も悪いことじゃ無いよ」

「でも俺はやる気が起きない…」

「それに、俺なんていても足手まといなだけさ。いない方が良い」

「足手まといではないと思うよ。君にも何か出来る事あるんだろう?」

「さぁな。やる気が起きないから分からないよ」

俺たちが話をしているうちに、俺は家についてしまった。

「おっと…。ここが俺の家だ今度遊びに来るといい」

うーむ、まずい。まさか俺の家の方が近かったとは…。一応聞いてみようか。

「なぁ、お前の家って…」

「ここが君の家…。じゃあ、僕は早く帰るように言われてるから帰るね」

「え?あぁ…。また明日」

「バイバイー」

…行ってしまった。しかも走って。よほどの事なのか、それとも…。

とりあえず俺は家に入ることにした。上空ではカラスが鳴いている。

ガチャガチャ、ガラッ!

「ふぅ…」

ため息をつく。けど思えば今日はいつもと違う一日だったな。何だか面白くなってきたぞ!

でも…彼は一体何処に住んでいるんだろう。………まぁいいか。

俺はリモコンを取り、適当に番組を回し始めた。

「う〜ん、6時ではいい物無いな」

最近はゲームも熱くなれる物も無いし、家にはPCも無い。飯でも作ろうかな…。と、その時

ピンポーン

誰だろう、一体。俺は玄関に行き、ドアを開ける。

「ちーす。飯持ってきてやったぞ」

「何だ、祐さんか」

この人は檜山 祐(ヒロ)。近所に住んでいて、頼れる兄貴分って感じの人だ。

…外見は金髪にピアス。白のシャツと紫の服、さらにサングラスまでしていてただのチンピラだけどな。一応大学生である。

「何だとは何だよ。せっかく持ってきたのによぉ」

「ゴメンゴメン。違う人かと思ってたんだ」

「違う人?誰だ?まさかついに恋人が!?」

祐さんはニヤニヤしながら俺をからかう。

「ち、違うよ!ある転校生だよ。でも、さすがにこんな時間には来ないかな」

「俺の友達なら大概の時間なら来るぞ?」

「祐さんと一緒にしないでくださいよ…。まぁ上がって。茶ぐらいなら出せるから」

「いいよ、お構いなく。飯届けに来ただけだしな」

「いいの?分かった。わざわざ飯ありがとう!」

「いいって事さ。じゃ、な。友人待たせてるんでね」

「はい、ありがとうございました」

バタンッ!

「さて、飯が手に入ったころだし食べ始めるか」

いつも飯は祐さんの手作りだが、これがなかなかうまい。さすがに自炊している事はある。

俺はニュースを見ながら飯を食べ始めた。

「ふぅ〜殺人に誘拐に強盗。全く、事件が絶えないねぇ〜最近は」

俺は今更な愚痴をこぼし始めた。

テレビもやはり時間帯が微妙ならしく、あまりいい物はやっていない。

俺は新聞を手に取り、読み出した。といっても俺はいつもテレビ欄と四コマ漫画ぐらいしか見ないが…。

「おっ、そういえば今日は「直撃!学生さんの家!!」か。見ないとなぁ〜」

俺は新聞を見ながら呟いた。

直撃!学生さんの家!!とは、決められた地域の色々な人に近所の学生の事を聞き、抜き打ちで家にお邪魔する人気番組である。

「さて…飯も食い終わったし、これから7時までどうやって時間潰そう」

俺は座ったまま考えるが、どうもいい手が無い。宿題も無いし…。まぁこれは無い方がいいけど。

「たまには部屋の整理でもしようかな」

俺は二階へ上った。そして、部屋に入り適当に整理し始めた。

「おっと、時計も合わせないとなぁ」

整理をし終わり、俺は一階へと戻る。

テレビをつけて…と

「突撃!学生さんの家〜!!さて、今日の地域はぁ〜♪」

丁度番組が始まったようだ。だがその時。電話がかかってきた。

「誰だ?こんな時に…」

渋々と俺は電話に出た。

「神谷です。どなたですか?」

「いきなりすまない。草薙だ」

何だ。速人か。何なんだろう。

「あぁ、何か用か?」

「いや、特に重要じゃあないんだが、明日の学校の予定を聞きたいんだ」

「何だ?忘れたのか?まぁいいや。明日は……」

何だ、それだけか…。

「………と言うわけだ」

「分かった、すまないな」

ガチャッ

ふぅ、続きを見るか。

「今日の一人目は有馬 祐樹さんでした〜!さぁ、次に行ってみましょう!」

もう二人目か。もう誰も邪魔しないだろうなぁ。




「ふぅ。今日も面白かったなぁ」

終わった後に俺はそう呟いた。

「さて、後は深夜まで何も無いか。さっさと風呂行くか」

そして俺は着替えを準備し、風呂へ行った。





「…今日は色々あったな…。謎の転校生、草薙 速人…」

俺はベッドに横になって呟く。

「それにしても変な奴だな。家の事になると話しを逸らすし…。まぁ一回だけ乗り気になったけど」

「おっと、もう2時、さっさと寝ないとな…。ま、彼のおかげで少しは楽しくなるかな」

だが、その時は知らなかった…。この日が。そしてその彼と会ったのが全ての始まりであった事を…。





後書き。。。

どうも、シェイドです。太陽をお読みいただきありがとうございます。
今回で始まった訳ですが、いかがでしょうか。
私の力不足もあり、いい出来ではありません。が、精一杯頑張ったつもりです。
ナレーターが洸視点なのは少し意味があります。まぁ、それは最終章のお楽しみなのですが^^;
最後どうなるかはすでに決まっているんですが、それまではまだ設定程度しかありません^^;
なので、これからどうなるか、私も楽しみであったりしますw
現在はまだまだ秘密な草薙 速人、これからどんどん秘密が明らかに…w^^
では、また次章でお会いしましょう^^

もし感想などあれば送っていただければ幸いです^^
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